今回は相続対策の⑤生命保険に加入する!をお送りします。
相続対策に生命保険を活用することは有効なのか?とよく聞かれます。相談者の多くは活用の方法を知らないため、生命保険の勧誘に勧められるがままに保険加入をして結果的に有効な手段では無くなってしまっているケースも散見されますが、上手に使えば有効な手段といえます。
相続対策で生命保険を活用する場合は大まかに2通りの考え方があります。
生命保険の死亡保険金を活用する。
生前贈与で生命保険を活用する。
今回は①の生命保険の死亡保険金を活用する。について解説していきます。
そもそも生命保険は被保険者が亡くなった時に、遺族に保険金が支払われます。被保険者(一家の大黒柱)が万が一の時に残された遺族の生活を守ることはもちろん、相続全体の効果もあります。
・死亡保険金には非課税枠があります!
法定相続人×500万円が非課税
(例)相続人が妻1人子供2人の場合、法定相続人は3人になるので1500万円が非課税
ここでいう「法定相続人」とは保険契約の受取人になっていなくても、相続放棄をした人
でも人数にカウントできます。ただし保険金の受取人は相続の資格者でなければなりません。
・亡くなられる方(契約者)の意思を反映できる!
受取人は契約者が指定できます。受取人の変更は何度でも、複数人でも指定ができるので、
亡くなられる方(契約者)の意思が反映しやすい。例えば特定の相続人に多額の現金を
渡したい場合は特定の相続人だけを受取人に指定できるメリットがあります。
・遺留分侵害請求がされた場合も有効!
遺産相続で争いになった場合によくある主張が「遺留分」です。遺留分とは法律で保証
される相続人の最低限の権利です。遺留分に満たない財産もしくは一切の財産が貰えな
かった相続人が不服を申し立てる権利を「遺留分侵害請求権」といいます。
2019年7月1日の民法改正により、「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害請求権」と名
称変更がされ内容も一部変更になりました。もっとも大きな変更点は、遺留分侵害の精算
を現物返還(現物分割)ではなく、金銭で行うべきとされたことです。
金銭で行うべきとされてしまったことにより、相続財産のほとんどが土地や建物の場合
は遺留分侵害の事も考慮すれば断然生命保険の役割が大きくなったと言えます。
・死亡保険金は現金化しやすい!
被相続人が亡くなると預金口座が凍結されてしまいます。遺産分割協議が終わって相続
がされるまで預金を引き出すことができません。(ただし「仮払いの申請」ということが
できますが一定の要件と引き出しには上限があります。)
遺産分割で紛争があった場合は相続が長期化してしまい、現金化がなかなか進まない
ケースがありますが、生命保険の死亡保険金であれば手続き後1週間程度で入金されますので葬儀費用やその他の出費、相続税の納税資金、遺留分の準備に役立ちます。
・相続放棄しても生命保険の保険金は受け取れる!
相続放棄をすることは「相続人が本来引き継ぐはずの財産や負債を一切受け取らない」と
いうことですが、ではなぜ保険金は受け取ることができるか?それは保険金が民法上、
の「相続財産」ではないからです。
相続のルールを決めている民法では、相続する財産を「亡くなった人の財産に関する権利
と義務」としています。一方、生命保険金は、生命保険契約に基づいて受取人が保険会社
から受け取るお金であり、「受取人固有の財産」なので相続財産ではないということです。
相続放棄は「相続財産や債務を一切引き継がない」という民法上の法律行為です。
「相続放棄が影響するのは相続人固有の財産・債務の引継であって、受取人固有の財産である保険金には影響がありません。ですから相続放棄をした場合でも保険金は受け取ることができるのです。
多額の負債がある場合で仕方なく相続放棄をしなければならないときなどは生命保険を活用することにより、遺族が安心して生活できる現金を残すことができます。
今回は「生命保険の死亡保険金を活用する!」について解説してきました。
税制のメリットもあり、亡くなられる方(契約者)の意思も反映でき、現金化もしやすく
相続放棄をしても保険金を受け取れる!すごいメリットだと思いませんか?
ただし、保険加入には一定の要件やそれに伴う保険料を払わなければなりません。
年齢によっては加入できないこともありますので、相続対策の一丁目一番地だと思います
のでお早目のご相談をお待ちしております。
次回は今回に引き続き、「相続対策の⑤生命保険に加入する!」の「生前贈与を活用する!」をお届けします。